出典:東芝テック
東芝テックは、日本の三大重電メーカーの一角である東芝の子会社であり、東芝グループとしては唯一、子会社でありながら東証一部に上場しているメーカーです。
今回の記事では、東芝テック製のコピー機について、同社の歴史や販売戦略なども交えて解説します。
東芝は、江戸後期に天才機械技術者で「からくり儀右衛門(東洋のエジソンとも)」と呼ばれた田中久重(初代久重)によって、1875年に設立されました。
田中久重の作品として有名なのは、おそらく「からくり人形『弓曳童子(ゆみひきどうじ)』」でしょう。この「弓曳童子」は、江戸時代のからくり(機巧)人形の中でも、最高傑作の一つと言われており、学研から創刊された科学ムック『大人の科学』シリーズでも再現復刻されていました。
初代久重は当初、東京銀座に自社工場を設けていたものの、養子として迎えた田中大吉(のちの二代目久重)が、東京芝浦へ工場を移転させ「田中製作所」を設立し、その後、三井財閥の関りや重電メーカーである芝浦製作所との合併などを繰り返し、1939年に東芝の前身ともいえる「東京芝浦電気(後の東芝)」が設立されました。
なお、芝浦時代に稼働していた同社の工場には、1881年に創業される沖電気工業創業者の沖牙太郎(おききばたろう)や、同じく1881年創業の宮田製銃所(現・モリタ宮田工業)創業者の宮田英助などが働いており、同社は日本工業化におけるパイオニアであるとも言われています。
現在の東芝は、日本重電3社(他、日立製作所、三菱電機)の一角であり、日常品である白物家電から、原子力発電、重電機、軍需製品など重工業分野まで幅広く手掛ける大手のメーカーです。
一方の東芝テックは、1950年に東京芝浦電気(当時)の大仁工場から独立分社化した企業で、社会インフラおよび釣銭機やPOS端末などのリテール商材、そしてプリンティングソリューション事業として、コピー機やラベルプリンターなどを製造販売しています。
東芝テックのプリンティング事業は、もともとは親会社である東芝が保有していたものの、1999年に親会社から譲渡される形で事業を開始しています。また、それまでは社名を「東京電気」としていましたが、事業譲渡と同時期に「東芝テック」へと社名を変更し、現在に至ります。
POS端末など創業時より行っていた事業は世界シェア1位など華々しい業績を誇る一方で、親会社から譲り受けたプリンティング事業においては業績不振が続いており、近年は「プリンティングソリューション」から「ワーキングプレイスソリューション」へと変更し、コロナ禍などにおける働き方の変化に合わせた事業編成を行っています。
東芝テックの主力複合機(コピー機)「e-STUDIO(イースタジオ)」シリーズは、カラー機は20枚機~75枚機、モノクロ専用機であれば20枚機~80枚機と幅広いラインアップを展開しています。また、一回印刷した内容を消し、用紙を再利用できる「Loops(ループス)」と呼ばれるラインアップも揃えています。
東芝テック製のコピー機は、国内でのシェア率は5%未満と低いものの、世界的にはシェア率10%程度を誇る健闘ぶりです(2012年頃のIDCデータでは20%でした)。
ここからは、同社製品の強みと弱みを解説します。
東芝テック製のコピー機の強みとしては「安さ」が一番に挙げられます。
大手コピー機メーカーの製品であれば、低速機~中速機であっても強気な価格設定ですが、東芝テック製品でれば低速機は本体価格50万円程度で導入することが可能です。また、POP印刷などを得意としており、リテール業界や小売店舗などでの使用例が多く報告されています(後述)。
保守、メンテナンスには「やや難あり」という評判です。
自社メンテナンスを減らす一方で、代理店による自営保守を主軸として行っていますが、代理店による保守の場合、メンテナンス部品などは東芝側から提供される仕組みとなっており、代理店に部品が送られないなどの理由で満足のできる保守サポートを行えないなど、企業体質に起因した問題点が指摘されています。
現在、カウンター料金の相場はモノクロ1円/枚~、カラー10円/枚~が一般的な相場となっていますが、東芝テックのコピー機も、相場とほぼ同程度の価格設定です。
コピー機の価格は、印刷ボリューム(月間印刷枚数)や本体の導入台数、相見積もりの有無など、複数の要素で価格が決定されますが、コピー機メーカーの中では本体価格を含めて、かなり安く提案してくれるメーカーです。
東芝テックは、主に主力複合機(コピー機)「e-STUDIO(イースタジオ)」と「Loops(ループス)」製品の導入事例を、それぞれ「特別養子印刷ソリューション」「Loops Style」といった区分にわけて公開しています。
導入先例として取り上げられている業種は、自社の得意とするリテールや飲食業界などが多く、POP印刷の内製化などを事例として挙げています。
▼業種別の導入事例(一部)
導入事例でも多数取り上げられている業種や使い方などは、自社の強みを全面に出しているため、導入を検討する際に事例とマッチする場合は良いでしょう。
飲食業や小売販売など、POPなどの印刷用途として作成する場合や、釣銭機やPOS端末などを既に東芝製で導入している場合は、対応窓口を一本化できるなどのメリットが生まれます。
一時期は「セキュリティの東芝」などとも言われていましたが、現在は、それほどセキュリティに対して強い印象がありません。また、ペーパーレス化や電子化など、近年トレンドとなっている印刷環境の見直しなどにも特段注力しているメーカーとは言えないため、オフィスの電子化などを進めている場合は不向きでしょう。
コピー機自体の品質としても、中堅メーカーの中では「中の下(ちゅうのげ)」であり、保守サポート面の不安などからも、「大企業」や「印刷ボリュームが多い企業」での積極的な導入はあまりおすすめしません。
「大企業」や「印刷ボリュームが多い企業」からは、富士フイルム(旧 富士ゼロックス)やキヤノンが人気です。
⇒富士フイルム(旧 富士ゼロックス)の特徴のページ
⇒キヤノンの特徴のページ
今回の記事では東芝テックの歴史やコピー機について紹介しました。記事の内容をまとめると以下の通りです。