富士ゼロックスの社名で長年親しまれていた同社は、2021年4月1日に「富士フイルムビジネスイノベーション株式会社」へと生まれ変わりました。
今回の記事では、富士フイルムビジネスイノベーション(旧・富士ゼロックス)について解説します。
現・富士フイルムビジネスイノベーションは、もともと富士ゼロックスの社名でコピー機(複写機)やビジネス用プリンターを製造・販売していたメーカーです(以下説明も富士ゼロックスとします)。
1962年に、富士フィルム写真(現・富士フイルムホールディングス/HD)と、ゼロックスのイギリス現地法人であり、当時アジア圏の統括していたランク・ゼロックス社の合弁により誕生した「富士ゼロックス」は、日本で業界初の普通紙複写機を販売します。
その後、富士ゼロックスはフィリピンへの進出を足掛かりとし、東南アジア各国でビジネスを開始しました。
主要製品はコピー機(複写機)を筆頭に、ビジネス用レーザープリンターなど印刷関係(ドキュメント関連)を得意としており、プリンターのエンジン部をセイコーエプソンなどのプリンターメーカーに対してOEM供給をしています。
また、近年は脱印刷(プリントレス化/ペーパーレス化)に焦点を当てたIT製品にも力を入れるなど、ITソリューション企業としての側面も持っています。
現状、日本国内における富士ゼロックスのコピー機(複写機)シェアは約34%とトップシェアを誇り、次いで2位リコー(約24%)、3位キヤノン(約19%)となっています。
低スペック・低速機など、低価格競争の激しいカテゴリーでは、やや劣勢の展開を見せるものの、高スペック帯の高速機領域では依然として強いシェア率を誇っています。
なお、先述の通り2021年4月1日に富士ゼロックスは、富士フイルムイノベーションへと社名を変更しました。
2018年ごろ、経営状況の厳しいアメリカのゼロックス本社を富士フイルムホールディングスが買収・経営統合すると発表したものの、米国ゼロックス側の株主が反対したことをきっかけに、一方的な破談となりました。この経営統合を発端とした抗争をトリガーとした損害賠償請求などを経て、富士ゼロックスは現在の社名に至っています。
富士ゼロックスは、中規模の企業から大手企業まで、ある程度の印刷ボリュームが見込める企業向けの製品を取り揃えています。
高品質な製品が多く、また製品の品質だけではなく印字品質などにおいてもトップクラスのメーカーです。ただし、製品の品質に比例して製品自体の価格も高めに設定されており、複合機メーカーの中でも「高級品」メーカーとの位置付けです。
ラインアップとしては、中速機(30枚機)から高速機(60枚機)が多く、同社主力の複合機「ApeosPort(アペオスポート)」シリーズには「81枚機」(A4用紙を分速81枚で印刷可能)の高速機も加わりました。従来の高速機でも印字速度が足りない企業から注目を集めている製品です。
また、同社は保守(サポート面)も非常に優れていることも特徴で、大きな強みとなっています。富士ゼロックスの保守拠点は約300ヵ所(販売店による保守含む)で、コピー機に不具合が起きた場合も安心してサポートを受けられます。
中小企業向けのラインアップが他社よりも少なく、30枚機以下のカテゴリーでは、リコーやキヤノンと比べて、やや割高となってしまう点は、同社の弱みといえるでしょう。導入する企業側にとっても、コスト面でのメリットを見い出しにくくなっています。
※印刷ボリュームの見込めない企業にとっては、やや強気の単価設定で見積もりを提示・導入されているケースが見られます。
現在、カウンター料金の相場はモノクロ1円/枚~、カラー10円/枚~が一般的な相場となっていますが、富士ゼロックスはモノクロ1.2円/枚~、カラー12円/枚~となっています。
印刷ボリュームやコピー機本体の導入台数、相見積もりなど複数の要素で決定されるカウンター料金ですが、富士ゼロックスはやや高めの設定となっています。
富士ゼロックスは自社の導入事例を公開しています。業種としては、製造業から印刷業、金融機関、学校、公共までと幅広く対応しています。
近年の導入事例としては「電子化」がキーワードになっており、ペーパーレス化の時流に乗った提案・ソリューションを厚くしている様子がうかがえます。また、昨今のコロナ禍における在宅ワーク(リモートワーク)の影響もあり「Adobe Sign」など、電子サインサービスも手掛けています。
▼業種別の導入事例(一部)
富士ゼロックス製品の導入に向いている企業を3つ紹介します。
月間の印刷枚数が多い企業では、高ボリュームの印刷に耐えうる耐久性と印刷速度を兼ね備えた機器が必要です。また、印刷枚数が多い場合に懸念される故障などの不具合にも、早急に対応してくれるサポート体制が整っているメーカーです。
文書管理システム(電子決裁システム)などを導入しているものの、決裁文書の形式が膨大かつバラバラな場合は、富士ゼロックス製ソリューションのひとつ「Docuworks(ドキュワークス)」を導入することで解決します。
ワード文書、エクセル文書など、様々なファイル形式の書類も、同ソリューション専用Viewerを使用することで一括で閲覧・管理が可能です。
また、電子的に付箋をつけたり重要なポイントへのマーカーなど編集が可能であったりと、資料の共有も電子的に行える点は使い勝手が良く、「ドキュワークスを使用したいからゼロックスを導入している」という企業もあるほどです。
もちろん、ドキュワークスは同社複合機とも強力に連携しているため、様々な形式のファイルをドキュワークスでまとめ、一括して自動製本印刷することなども可能です。
支社・支店など含めて、複合機を導入しなくてはいけない企業の場合、大変な点が複合機の一括管理です。特に、本社で一括して契約を行っている場合は、他の拠点の設定状況や印刷状況なども統合的に管理しなくてはなりません。
社員証によるICカード認証なども新入社員が増える度に、認証許可の設定が必要であったり、パソコンのリプレースなどを行った場合も、設定の変更が必要であったりと、管理業務は多岐にわたります。
富士ゼロックスの「複合機活用サポートパック」では、「設定代行」なども行ってくれるため、自社での一括管理が難しい場合でも安心して利用できます。
こちらでは、富士ゼロックス製品の導入に向いていない企業を2点ピックアップして紹介します。
富士ゼロックスの製品は、同社のラインアップからも見て取れるように、中~大規模な企業(印刷枚数も多い企業)への導入に向いている製品が多い特徴を持っています。
印刷ボリュームの見込める企業にとっては、作業効率なども加味したコストメリットを創出できるものの、印刷枚数が少ない場合や、トータルコストに焦点を当てている企業には、コスト面でのメリットが少なく、あまりおすすめできません。
製品自体の品質は良いものの、中小企業向けにはやや割高なコストで提供している場合が多いことが理由の1つです。
高性能・高スペック帯の機器が多い富士ゼロックス製品は、「あったら便利な機能」が数多く搭載されています。
すべての機能を使いこなせれば便利かもしれませんが、実際に使いこなしている利用者は多くなく、導入から撤去まで一度も使われない機能もあるほどです。製品自体は非常に良く、多機能で便利なものの、基本的な機能(印刷、コピー、スキャン、FAX)しか使わない企業にとっては、無用の長物となる可能性があります。
必要最低限の機能を備えたコストパフォーマンスの優れた機器を探している場合は、富士ゼロックス製品は選定段階で外してしまっても良いでしょう。
今回の記事では富士フイルムビジネスイノベーション(旧・富士ゼロックス)について紹介しました。記事の内容をまとめると以下の通りです。