Published at2024年5月20日
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この記事は、デザイン制作の現場で
「画面で見た色と、印刷された色のズレに悩んでいる」
「社内で出力したプリントを、そのまま確認・提出に使いたい」
そんな方に向けた内容です。
この記事で扱うのは、家庭用プリンターではなく、業務用のプリンター・コピー機。
デザイン制作の現場で使われることを前提に、「印刷のキレイさ」「色の再現性」「コスト」のバランスで比較します。
北村豊貴
▼この記事でわかること
| この記事の監修者 北村 豊貴 Atsuki Kitamura ![]() |
OA機器販売店で複合機営業を担当し、中小企業から大手法人まで数百社以上の契約・導入を経験。 業界の課題解決を志し、2023年「コピー機価格診断ドットコム」の立ち上げを機に、見積診断や価格交渉を開始。 これまでに累計140社の価格診断を実施(2025年9月現在)。営業現場で培った実務ノウハウと、金融・OA機器メディアでの執筆実績を基に、透明性あるコピー機導入とコスト削減を支援している。 |
目次
デザイン制作の現場で使うプリンターやコピー機は、「とにかく高画質な機種を選べば正解」というものではありません。
重要なのは、「どこまでの品質を社内で完結させたいのか」「どの工程までを内製し、どこから外注するのか」の線引きを先に決めることです。目的によって、選ぶべき機種のクラスは大きく変わります。
北村豊貴
この章では、デザイナー視点で押さえておきたいプリンター/コピー機選びのポイントを整理します。
チェック項目は次のとおりです。
デザイン制作現場のプリンター&コピー機選びで重要なのは、印刷品質です。家庭用や低価格帯のプリンターでも、ラフ確認や簡易チェック用途であれば十分なケースもあります。
北村豊貴
特に注意したいのは、「画面で見た色」と「実際に印刷された色」のズレです。この差が大きいと、修正の手戻りやトラブルにつながりやすくなります。
インクジェットプリンターとレーザープリンターでは、印刷方式の違いから仕上がりの傾向も異なります。
インクジェットプリンターは液体インクを紙に噴射して印刷する方式で、写真やグラデーション表現に強く、鮮明で高解像度な写真表現が得意です。
一方、レーザープリンターはトナー(粉末状のインク)を紙に熱転写する方式のため、文字や線、ベタ面が安定してシャープに再現されます。
特に「細い線」「小さな文字」「均一な色面」といった表現は、レーザープリンターのほうがブレにくく、オフセット印刷に近い仕上がりをイメージしやすいのが特徴です。
また、レーザープリンターは印刷速度が速く、耐久性も高いため、日常的にプリントを行うデザイン現場との相性が良いと言えます。
サギヤマ
プリンターの解像度はDPI(Dots Per Inch、1インチあたりのドット数)で表されます。DPIが高いほど、印刷される画像やテキストの細部がより鮮明に再現されます。
DPIの目安は以下の通りです。
テキスト中心の印刷:300dpi
グラフィック・イラスト用途:600dpi以上
写真や高精細なビジュアル重視:1200dpi以上
ただし、解像度は「数値が高ければ高いほど良い」という単純な話ではありません。実際の仕上がりは、印刷エンジンやトナーの粒状性、カラーマネジメント(※次の章で説明)といった要素の影響も大きく受けます。
北村豊貴
デザイン制作において、カラーマネジメントは重要な要素です。色の再現性が高いほど、画面で見たイメージと印刷物のズレが少なくなり、クライアントの意図に沿った印刷物に仕上げやすくなります。
カラーマネジメント機能は、モニター・プリンター・出力結果の色をできるだけ一致させるための仕組みのことです。デザインの色をできるだけ印刷時に忠実に再現するために欠かせません。
ただし、本格的なカラーマネジメント機能(厳密な色校正・完全再現)を構築しようとすると、数百万円クラスのプロダクションプリンターが必要になります。
業務用プリンター・コピー機でできるのは、「最終製品と完全に同じ色」ではなく、「できるだけ近い色味での再現」までです。
そのため、デザイン制作の現場では、「社内確認用」「ラフチェック」「クライアントへの事前確認」で使うことを前提に「色味には多少のズレが生じる可能性がある」ことを、あらかじめクライアントに説明しておくことが重要です。
PostScript(ポストスクリプト)は、Adobe Systemsが開発したページ記述言語です。テキストや画像、グラフィックスを正確に配置・描画できるため、デザインデータ通りに印刷するために使われます。
IllustratorやInDesign、Photoshopなど、Adobe製ソフトで制作したデータとの相性が非常に良いのが特徴です。「フォントのズレ」「文字化け」「線の太さが変わる」「レイアウトが崩れる」といったトラブルを防ぐために、PostScript対応は重要なポイントになります。
一般的なオフィス用コピー機にはPostScriptは標準搭載されておらず、オプション対応が一般的です。
安価なプリンターの場合はそもそもPostScriptを後付けできない機種もあります。
北村豊貴
デザイン制作現場で使うプリンター&コピー機は、最大用紙サイズがA3(できればA3ノビ)対応の機種をおすすめします。
A3ノビ対応なら、ポスターやチラシ、見開きレイアウト、断ち落としを含むデザイン等も張り合わせなしで1枚出力できます。ズレのないきれいな仕上がりで確認できるのが大きなメリットです。
また、リース契約ではA4機よりA3機のほうが安くなるケースもあります。A3機がオフィス向けの“売れ筋”機種であるため、販売店が大量にA3機を仕入れているからです。
北村豊貴
プリンターやコピー機は、機種によって対応できる用紙の種類や厚みが異なります。厚紙やマット紙、コート紙、和紙、色紙、透明フィルム等、特殊な用紙を使用する場合、対応可否や推奨設定を事前に確認しておくことが重要です。
特に透明フィルムなどへの印刷が必要な場合は、ホワイトトナー有無によって印刷の完成度に差が生まれます。ホワイトトナーが搭載できる機種は限られます。
北村豊貴
最後にやはり重要なのは価格と導入方法です。業務用プリンター・コピー機の導入方法には、主に リース・一括購入・レンタル の3つがあります。デザイン制作の現場では「リース」が選ばれるケースが最も多いのが実情です。
一般的に、リース契約は 本体価格30万円以上 が目安となり、業務用プリンター・コピー機の多くはリース対象になります。
コピー機の本体価格はメーカーの示す標準価格よりも大幅に安くなることが多いです。
北村豊貴
業務を円滑に進めるには、プリンターやコピー機の保守体制を整えておくことが大切です。月間の印刷枚数が500枚以上になるようなら、カウンター保守契約を結びスムーズな修理が受けられる状況を整えましょう。
デザイン制作向けのプリンター・コピー機を選ぶ際は、単に「高精細」「プロ向け」といった言葉だけで判断するのは危険です。
重要なのは、
・どこまで色の再現性を求めるのか
・社内出力は確認用か、提出・納品レベルか
・外注印刷との役割分担をどう考えているか
といった“制作フロー全体”との相性です。
ここでは、実際にデザイン制作の現場で導入されている業務用プリンター・コピー機の中から、「印刷品質」「色の安定性」「コストバランス」の観点でおすすめできる機種をピックアップしました。
北村豊貴
▼おすすめの機種を紹介します

出典:富士フイルムビジネスイノベーション公式
印刷品質と価格のバランスを重視するデザイン制作現場にとって、Apeos C2571は有力な選択肢となります。オフィス向け複合機として流通量が多く、複数の販売店が取り扱っているため、相見積による価格比較がしやすく、適正価格で導入しやすい点も特徴です。
富士フイルム(ゼロックス)のコピー機は色の安定性や階調表現の自然さが評価されており、デザイン事務所や制作会社でも導入実績が多いです。
Apeos C2571は先進的なカラーマネジメント技術を搭載しており、社内確認用のカンプ出力やクライアント提出前のチェック用途にも向いています。
宇宙人
北村豊貴
また、厚紙や一部の特殊紙にも対応しており、チラシ・パンフレット・提案資料など、多様な制作物を1台でカバーできる柔軟性も魅力です。
サポート体制が充実している点も、富士フイルム(ゼロックス)機の強みです。トラブル時の対応が比較的早く、制作スケジュールがシビアな現場でも安心して使いやすいでしょう。
北村豊貴
サギヤマ
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※ApeosPro C650についてはこちらを参照。
| 標準価格(税抜き) | 2,383,000円 | 販売価格目安 | 約142万円 |
| リース料金相場 | 約2.6万円/月 | カウンター料金相場 | カラー12円/枚、モノクロ1.2円/枚 |
| 解像度 | 1,200×2,400 dpi | 最大用紙サイズ | SRA3 |
| 印刷速度 | 25枚/分 | PostScript対応可否 | オプションで可 |

出典:キヤノン公式
キヤノン iR-ADV C3926Fは、「色の安定性」と「出力の再現性」を重視するデザイン制作現場に向いた業務用複合機です。キヤノン iR-ADV C3926Fも富士フイルム(ゼロックス)Apeos C2571同様、オフィス向け複合機ですが、多くのデザイナーに支持されています。
特に、Web+紙(提案書・パンフ・簡易カンプ)を並行して扱うデザイナーには相性が良い機種です。
「社内で出力したプリントを、そのままクライアント確認・社内共有に使いたい」
「写真・図版・グラデーションを破綻なく安定して出したい」
「色合わせは厳密な校正機レベルまでは不要だが、毎回色がブレるのは困る」
現場におすすめします。
キヤノンか富士フイルム(ゼロックス)か迷った際には、印刷サンプルを取り寄せて色の出方や画質レベルを確認しましょう。
サギヤマ
北村豊貴
| 標準価格(税抜き) | 1,980,000円 | 販売価格目安 | 約118万円 |
| リース料金相場 | 約2.2万円/月 | カウンター料金相場 | カラー12円/枚、モノクロ1.2円/枚 |
| 解像度 | 1,200×1,200 dpi | 最大用紙サイズ | A3 |
| 印刷速度 | 26枚/分 | PostScript対応可否 | オプションで可 |

出典:コニカミノルタ公式
コニカミノルタ複合機もデザイン制作現場で人気があります。解像度だけを見ると1200×600 dpiと数値上は控えめですが、実際に印刷してみると実務では十分な画質が得られます。
コニカミノルタは、写真・色表現に強みを持つメーカーで、bizhubシリーズもその流れをくむモデルとして、自然な色再現と安定感が評価されています。
特に
「写真・ビジュアル中心のデザインを扱うことが多い」
「RGB→CMYK変換時の“色の転び”をなるべく抑えたい」
デザイナーには向いています。
bizhub C251iにはApeos C2571、iR-ADV C3926FでオプションとなっていたPostScript対応が標準機能として付いています。
宇宙人
北村豊貴
bizhub C251iは、高精細な上位機ほどの価格帯ではありませんが、画質とコストのバランスが良く、導入しやすいのが特徴です。
| 標準価格(税抜き) | 1,505,000円 | 販売価格目安 | 約91万円 |
| リース料金相場 | 約1.7万円/月 | カウンター料金相場 | カラー12円/枚、モノクロ1.2円/枚 |
| 解像度 | 1,200×600 dpi | 最大用紙サイズ | A3 |
| 印刷速度 | 25枚/分 | PostScript対応可否 | 〇 |

出典:OKI公式
プリンター機能のみで十分な場合は、OKI MICROLINE VINCI C941dnが有力候補です。
ApeosやiR-ADVとは異なり「コピー機能(スキャン機能)」や「FAX機能」などは付いていませんが、印刷速度は速くPostScriptにも標準対応しています。
ホワイトトナー対応で透明フィルムなどへの印刷が可能です。
カウンター料金制ではないため、利用者自身が純正トナーを購入して使用します。印刷コストは低く、カラー約11.6円・モノクロ約2.5円程度です。
購入から5年間は無償修理の対象となります。ただし即日修理が保証されていないため、一定のダウンタイムを想定した運用が必要です。
| 標準価格(税抜き) | 1,398,000円 | 販売価格目安 | 約84万円 |
| リース料金相場 | 約1.5万円/月 | カウンター料金相場 | – |
| 解像度 | 1,200×1,200 dpi | 最大用紙サイズ | A3ノビ |
| 印刷速度 | 50枚/分 | PostScript対応可否 | 〇 |

出典:富士フイルムビジネスイノベーション公式
ApeosPro C650は、今回紹介している機種の中でも最も印刷品質と制御性能を重視したプロ向けモデルです。一般的なオフィス向け複合機とは位置づけが異なり、社内出力のクオリティを極限まで高めたい制作現場を想定して設計されています。
特にDTP制作会社や印刷物を頻繁に扱うデザイン事務所等で多く採用されており、ApeosPro C650なら外注前の色校正や仮校正を社内で完結させることも可能です。
富士フイルム(ゼロックス)ApeosPro C650の解像度は2400×2400dpi。オフィス用複合機Apeos C2571よりもはるかに上の解像度で、滑らかな画質が期待できます。
印刷速度も65枚/分と非常に速く、幅広い用紙サイズや紙厚に対応しています。SIQAにより、手元で画質の調整を行えるのも魅力です。
画質を妥協したくないデザイン事務所でも使用できて、日常業務はオフィス複合機としてこなせます。
北村豊貴
| 標準価格(税抜き) | 4,708,000円 | 販売価格目安 | 約280万円 |
| リース料金相場 | 約5.2万円/月 | カウンター料金相場 | カラー12円/枚、モノクロ1.2円/枚 |
| 解像度 | 2400×2400 dpi | 最大用紙サイズ | A3ノビ |
| 印刷速度 | 65枚/分 | PostScript対応可否 | オプション対応 |
今回は、デザイン制作の現場で使いやすいプリンター&コピー機をテーマに、おすすめ機種をご紹介しました。
選び方のポイントは、以下の5点です。
上記を踏まえた、デザイン業・デザイン事務所におすすめのプリンター&コピー機は以下の5種類です。
いずれも、「色の再現性」「業務用としての安定性」「デザイン制作での使い勝手」のバランスに優れた機種です。
すべての現場に高額な機種が必要なわけではありません。
「どこまでを社内で出力するか」
「最終成果物との色合わせをどこまで求めるか」
によって、最適な選択は変わります。
北村豊貴

最後に当サイト「コピー機価格診断ドットコム」をご紹介します。コピー機価格診断ドットコムでは、お客様が販売店と直接やり取りする必要はありません。
まずお客様からお問い合わせをいただくと、当サイトが提携している複数の販売店に見積を依頼します。その中から安い販売店の見積書を取り寄せ、メールにてお客様へお届けします。
ご利用のメリット
また、お客様の許可なく販売店にお客様の連絡先(電話番号、メールアドレス)を伝えることはございませんので、販売店からしつこい営業を受ける心配はありません。
コピー機導入にかかるコストを抑えたい方に、安心してご利用いただけるサービスです。
当サイトのサービス内容については「コピー機価格診断ドットコムとは?」記事もご参照ください。
なお当サイトでは、現在ご利用中の複合機リース料金&カウンター料金が適正価格かどうか無料で診断いたします。「コスト見直しのきっかけ」「ぼったくり商法の回避」にもつながりますので、ぜひお気軽にご相談ください。