Published at2021年11月15日
Updated at
目次
出典:OKI
沖電気工業(OKI)は、日本大手の電機メーカーで、主に日本国内のインフラ(ETCなど)や金融(ATMなど)、さらに通信キャリア(PBXなど)関連の製品をメインとしています。
一方、2020年に吸収合併された沖電気の子会社である「OKIデータ」は、OKIグループの中でも唯一コンシューマー向けの製品である業務用プリンターや複合機を扱っていました。
今回の記事では、沖電気工業(旧OKIデータ含む)の複合機(コピー機)について解説します。
1881年、沖牙太郎(おき・きばたろう)が創業した「明工舎」が、現在の沖電気工業(以下、OKI)です。
日本近代史の中ではマイナーな起業家の牙太郎ですが、1871年には明治時代の官省のひとつ「工部省電信局(後のNTT)」などで、電信技術に携わった人物であり、日本初の国産電話機を開発した人物です。
OKI創業時(明工舎時代)は、電信機・電話機・電線・電鈴等の製造、販売を主な事業としており、特に牙太郎自身が官省出身という点からも、官需・軍需の製品に強みを持っていました。
後に勃発する日清戦争を前提とした軍需品(主に通信機)の需要により事業を拡大し、海軍専用の電話線架設(インフラ)や、当時、浅草にあった高層展望塔「凌雲閣(りょううんかく)」の電話設備などを担務し、電話・通信機における国内市場を独占、会社の基礎を確立させたと言われています。
現在のOKIが保有する主力事業も、創業当時の通信機器など官公関連事業が多く、また、当時と変わらずNTTなどとも関連の深い経営を行っています。
一方、OKIの保有するコンシューマー向けの製品としては、現在、業務用プリンター/複合機だけとなっており、1994年にOKIより独立分社化(2021年4月に再合併)した沖データ(以下、OKIデータ)が事業子会社として担当していました。
このように、一般人の目に触れる商材が少ないことから、大手総合電機メーカーに比べて知名度が劣っていることなどは同社の弱みですが、製品自体は独自性が強く、知る人ぞ知るメーカーとも言われています(※)。
例えば、OKIデータ製品のプリンター/複合機は、一般的な業務用レーザープリンターなどとは異なり、レーザー光源を使用しない「LED方式」を採用しています。このLEDプリンターは、1979年にOKIデータ(開発当時はOKI)が世界で初めて開発に成功し実用化させた技術・製品です。
LED光源は、一般的なレーザー光源の機器と比べると、印字の高精細化や筐体サイズの小型化、さらにエンジン部分の耐久性向上などのメリットがあるとされており、また、LED光源(ヘッド部)自体の生産やLED自体の光量の安定性など、技術的な難易度が非常に高く、競合他社もほぼ進出してこない技術領域と言われています。
※OKIは、LEDプリンターの販売以前より開発・販売している業務用SIDM(Serial Impact Dot Matrix/ドットプリンター)のシェアが、欧州をはじめとした海外で高かったこともあり、同社のプリンター/複合機(または【OKI】というブランド)は、日本国内よりも海外の方が有名という特徴も持っています。
OKI製の複合機は、一般的なコピー機能やFAX、プリントなどの機能を備えてはいるものの、正確にはコピー機とは異なります。OKIの業務用プリンターをベースにして製造されているため、富士フイルム(旧富士ゼロックス)やキヤノン、リコーなどの他社製品とは異なります。
まずは、プリンターをベースとした複合機であるという点を念頭に、OKIの強みと弱みを紹介します。
OKI製複合機の強みは2点あります。
1点目は「コスト」、2点目は「印字品質(プリント画質)」です。
OKIの複合機は、同社の主力プリンター「COREFIDO(コアフィード)」をベースに作られています。このコアフィードの最大の特徴は「5年間無償保証」で、製品の購入後(「お客様登録」後)、最長5年間は無償で動作保証をするという付加価値がついています。
この「保証」は一般的な「保守」とは性質が異なるものの、保守費用など故障時のコストが気になる中小企業やSOHO、個人事業主には好評で、トータルコストとしては「安価」に複合機を導入できる点は強みと言えるでしょう。
また、同社独自技術でもある「LED」を使用しており、印字(特に精線や極小印字)に関しては「レーザー」製品より優れています。もともと同社のプリンターは印字品質が良く、デザイン事務所などでも使用されており、「印字品質」においても心配はいりません。
コピー機と比較した際のOKI製複合機について、弱みは2点あります。
1点目は「コピー画質」、2点目は「耐久性」です。
冒頭でも解説した通り、OKIの複合機は一般的なコピー機とは異なります。コピー機は、「コピー(複写)」をベースに設計されているため、当然コピー画質は高く、また大量の複写に耐えうる堅牢性を兼ね備えています。
一方のOKI製複合機は、「プリントアウト(印刷)」を主な用途として設計されたプリンターをベースとしているため、コピーの画質や本体の耐久性は、コピー機に比べるとやや劣ります。
OKIの複合機は、コピー機とは異なり「カウンターチャージ方式」ではありません。トナー(粉のインク)を購入し、印刷する家庭用プリンターと同様の仕組みです。
そのため、コピー機との比較は難しいものの、メーカー公称値でのランニングコスト(印刷価格)は、カラーが約11.7円、モノクロが約2.8円です。
本体価格はコピー機に比べると安いため、コピー機と比較検討する際は、5年間使用時のトータルコストなどで比較することをお勧めします。
OKI製品の特長である「コスト」「印字品質」などから、導入に向いている企業はSOHO、中小企業など設置環境が手狭で、なおかつコピー機ほどのコストをかけたくない環境に適しています。
導入事例などでも、「会計士事務所」などが紹介されており、細かな文字印刷を必要とする環境から人気があります。
リプレース(機器の入れ替え)などを検討している際、既存機がゼロックスやキヤノンなどのコピー機の場合は、注意が必要です。
OKIの複合機は、一般的なコピー機と比べると「必要最低限の機能性」しか持っておらず、また、コピー機業界では当たり前の「即日保守」などにも対応していません。
さらに、印刷濃度にかかわらずページ単価(〇円/枚)が固定されているコピー機とは異なり、印刷濃度が高ければ高いほどトナーを消費してしまうプリンターは、環境や使い方によっては印刷料金が「割高」になる場合もあります。
今回の記事では、OKI(OKIデータ)の歴史や同社の複合機について紹介しました。記事の内容をまとめると以下の通りです。